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同族嫌悪 (神楽と沖田)


「アンタなんざ大嫌いでさァ」
「それはこっちの台詞アル」

顔をあわせる度に罵り合い。そして乱闘。

それでも関わり合うのは、そばにいることをゆるすのは、お互いひとりがふたりよりもさみしいと知っているから。


「やっぱりオマエ嫌いアル」
「そりゃあ、お互い様でさァ」

そして同時にそれがどれだけ虚しいことかも知っていて。


「死んでくだせぇ」
「オマエがくたばるヨロシ」

傘と剣を構えて秒読み開始。
かくしてお互いを確かめるための儀式は始まった。



(銀魂。神楽と沖田。口調おかしいです。書くの難しいけどこのふたり大好き。)

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2006.04.28 | | Comments(0) | Trackback(0) | 銀魂

煙になって空に宿り (スノウとチハヤ)



死んだ人間は空へ行くんだよ、と言ったその言葉を思い出した。
そんなことあるわけがない。と心の中で呟いた。

「それって死んだ人間に未練があるだけだよ。未練があったところで死んだひとがかえってくるわけじゃないし」

答えるとスノウは困ったように微笑んだ。
そうだね、と言って。


「残された人は確約が欲しいんだよ」

その言葉の意味がわからず何も答えなかった。
スノウはきっと自分の答えなど最初から求めてはいないのだろうが、そのまま話し続けた。

「いつも傍にいてくれる、いつかそこに行ったらもう一度逢える。待っていてくれる、そういう確約。チハヤは欲しくならないか?」
「…そうだね」

曖昧に答えて空を見上げた。
スノウは、こんな辛気臭い話やめようか、と言って笑った。


今、目の前にあるのはかの人墓標。
そこには真新しい花が手向けられている。
それをぼんやりと眺めているうちに今は墓の中で静かに眠っているであろう彼との会話を思い出した。

「……空へ行けた?」

紅いバンダナを風にはためかせながらチハヤは眼を細めて呟いた。
あの空で自分を待っているのだろうか。
柔らかい笑顔で見守っているのだろうか。
もう一度、逢えるのだろうか。

未練だ、と自分を嘲笑する。

いつか、あの空へ自分も行くだろう。
そしてもう一度逢えたら、そのときは答えよう。
君が言ったことは正しかったよ。自分も確約が欲しくなった、と。
そのとき君はなんと言うだろう。

「やっぱり」

言って、やはり困ったように微笑むのだろうか。


空へと登る煙を眺めながらそんなことを考えていた。



(古。多分幻水4をクリアした直後くらいに書いたもの。出てきたので載せてみる。なんだかんだいってうちの4主はスノウが好きです。)

2006.04.26 | | Comments(0) | Trackback(0) | 幻水

静かな終わり (コルセリア→キリル)


「貴方じゃなきゃよかった、なんて。そんなこといわないわ。…ううん、言えないの間違いね」

「私は貴方に出会えて幸せだった。貴方はあのともに過ごしたながいようでみじかかった時間のなかで、私に一生懸命生きる意味と価値を教えてくれた、よ」

「たくさんの、かけがえのないものを与えてくれた」

「ねぇキリル、私幸せなのよ。今この瞬間も」

「だから、」

(泣かないで)

もう確認することもできないが、側に立っているであろうキリルに向けて笑みをかたどったコルセリアはベッドに横たわったまま、静かに瞳を閉じた。

「ありがとう」

果たしてその言葉が彼に届いたのかはひとり以外知る由もなく。



(ラプソディア。キリルとコルセリア。捏造。終わりの日に姿をみせた優しいひとは、)

2006.04.25 | | Comments(0) | Trackback(0) | 幻水

利用されてもいいかな、なんて (4主とシグルト)

「…無礼を承知で申し上げますと」
「何?いきならあらたまって」
「今の貴方は、道化に見えます」
「…厳しいねぇ」

シグルトは真っ直ぐにこの船の主を見つめた。
少年というには大人びていて、青年というにはまだあどけなさを残した軍主は、シグルトの視線をしっかりと受け止めながら困ったように微笑んだ。

「確かに、僕はお飾りの軍主かもしれないね。実質、この軍はエレノアさんとリノ王で動いてるようなもんだ」
「………」
「僕はただ罰の紋章を持つだけの、人形だね」
「チハヤ様」

かち合わせていた視線を外して、チハヤは遠くの海を見つめた。
甲板には生温く纏りつくような風が吹いていて、もうすぐ雨が降るとシグルトは思った。

「…それでもいいんだ」
「え?」
「何かあったとき。望ましくはないけれど、万が一の危機にみんなを守れるならそれで僕は、」
「チハヤ様!」

その先を聞いてはいけない気がしてシグルトは声を荒らげて阻もうとする。

(駄目だ、その先を言わせては、冗談だとしても、否。それが本気だと知っているから、こそ。)

「そのために命を落としても構わない」

チハヤの海よりも青い瞳は強い意思を秘めてシグルトを貫いた。



[幻水4。シグルトと4主。タイトルは自暴自棄6題から]


2006.04.24 | | Comments(0) | Trackback(0) | 幻水

戻りたい戻れない戻ってはいけない (ユーラム)


ソルファレナ奪還。
軍の最終目標にて、敵の最後の砦。
当然総力戦を避けることはできず、命の保証もない。

「怖くは、ないですか」

隣に立つノルデンはこちらを気遣うように視線を向けた。
軽鎧に身を包んだその姿はかつて自分の副隊長をしていたときと同じに見えて、震えだす身体に気付く。

「…えぇ。いえ、怖いです。でも、」

腰に差した剣の重さを確かめながら柄に手をかける。
ずしり、と重いそれはこれから奪うひとの、生物の命の重さを表している気がして、一瞬だけすべてを置いて逃げてしまおうかと過去の自分の残骸が耳元で囁いた。
首を横に振ってその考えを否定する。

(だってこの命は、)

「これ以上、逃げたりしません」
「そうですか」

(既に殿下に捧げたのだから)

強張った表情の自分を見てどう思うのだろう。
彼にとっての自分はお世辞にも良い印象を持たせているとは思えない。

「ノルデン殿はどの部隊に?」
「貴方の補佐です」
「は?」
「部隊長は貴方です」

ボズ殿と私が貴方の補佐にまわります、とノルデンは微笑んだ。

2006.04.23 | | Comments(0) | Trackback(0) | 幻水

なんだ笑えるじゃんか(ウルダとガヴァヤ)

「それで?一体どうするの。わたしを殺す?」

突然聞こえてきた物騒な言葉に、巡回をしていたガヴァヤは反射的に身を隠した。
時刻はおそらく日付が変わった頃、深夜。
澄んで張り詰めた湖の空気に、女性の凛とした声が響く。

「殺すの?」

繰り返す女性の声がガヴァヤには聞き覚えがあって、思わず壁の影からちらりと盗み見た。
見ると金髪の女性、エルフのウルダが壁に背を押し付けられる状態で男に追い詰められていた。
逃げ場をなくした彼女の首元にはナイフが鈍く光っている。

ガヴァヤは思わず仲介に入ろうとして踏みとどまる。
ウルダはああ見えても冷静に物事を判断できる女性だ。しかも人間にとやかく言われることを嫌う。
少し様子を見てから行動に移ろう、とガヴァヤはいつでも飛び出せる体勢でやりとりを覗き見る。

「貴方のその行動はとても愚かだわ。愛を異族に向けることも、力ずくで手にいれようとするその行為も」
「黙れ!」
「私は貴方に興味なんてないわ。名前すら覚えていない」
「何だと!」

男の手に力が入り、ウルダの首に赤い筋を作る。
痛みにか、僅かにウルダは眉をしかめる。
それが気にいったのか男は更に力を込めようと、して。

「ちっ」

ガヴァヤよりも一瞬早く飛び出したものが、男のこめかみを掠め、ウルダの押さえ付けられた横に刺さった。
石壁の隙間に突き刺さった矢は独特なもので、エルフが使うものだった。

「イサト!」

それまで嫌気のさしていたウルダの表情が一瞬にして輝く。
愛しい相手を見る、その目。

「こんな夜更けになにをしている。斎主様の部屋の前で荒事をおこすとは」

ウルダの声を聞いてもイサトはふだんと変わることなく淡々と、冷静な声でふたりをたしなめる。
悪態をつく男と、何かいいたげなウルダをスルーしてイサトはガヴァヤが隠れているほうに視線を向けた。

「貴方も、覗き見とは随分な趣味ですね。ふたりを止めたら如何ですか?」
「………」

呼ばれる前に飛び出していたガヴァヤはイサトの冷ややかな視線を浴びてう、と行き詰まったがなんとか「悪い、」と言葉を口にする。

「まぁいいでしょう。貴方も、相手の気持ちも考えずに自分の理想をおしつけることは問題です」

男の手を後ろ手に回し、動きを封じる。誰にも四の五の言わせずにイサトは男を半ば引きずるように連れ「王子か軍師殿か…ここの有力者にこの男の処分は任せましょう」その場を去っていった。
残されたのは憤然とした感情を表立つウルダと気まずそうな表情のガヴァヤ。

「あのよ、ねーちゃん…」

しどろもどろに口をひらくガヴァヤを一睨みしてウルダは息をついた。

「…知ってたわ。貴方がその影で見てたこと」


「でもいいの。手を出してくれなかったのはむしろ感謝するわ」とウルダはイサトが消えた道を視線で追い、その場を去ろうとする。

「じゃあね」
「あ、おい」
「まだ何かあるの?」

ウルダは訝しげにガヴァヤをねめつける。その瞳は明らかに不審に満ちていた。

「あ、いや」

取り出したハンカチをウルダの首に当てる。
傷を塞いでいなかったウルダの首元は血が微量ながらも滴っていて。

「一応医務室いったほうがいいぜ?」
「こんなもの掠り傷だわ」
「じゃなきゃ紋章で癒すとか」
「貴方の肌じゃないし、自由にさせてもらうわ」
「そりゃあそうだけど」

せっかく綺麗な肌してんだから大事にしろよ、とガヴァヤが口の中でもごもご言うと、ウルダは一度だけ大きく目を見開いて、微笑した。
けして人間の前でみせることのないウルダの表情にガヴァヤは反則だと思いながらも見惚れてしまった。

「分かったわ。あとでシルヴァだったかしら、医者のところにいく」

それでいいでしょ?とウルダは身を翻す。
ガヴァヤはそのプライドの高いエルフの女性の姿が見えなくなっても暫く立ち尽くしていた。


(幻水5。ガヴァヤとウルダとイサトさん。突発ネタのひとつ。タイトルはお題をお借りしました。)

2006.04.23 | | Comments(0) | Trackback(0) | 幻水

饅頭 (幻水4)


「珍しいね。ふたりなんて。ハーヴェイは?」

饅頭を頬張りながら歩いて来たチハヤ様は巨大な紙袋(中身はすべて饅頭らしい)を抱え直しながら当然のように俺とヘルムートの間に座った。
チハヤ様の奇行に慣れていないヘルムートは木で出来た長椅子のぎりぎりまでチハヤ様から離れた。引きつった顔に精一杯の笑みをはりつける。
その態度にもチハヤ様は気を悪くする様子もない。
妙に高いテンションといい何かあったのだろうと俺はとりあえず嫌でも目に入る紙袋を指差してチハヤ様に問い掛けた。

「ハーヴェイはキカ様に呼ばれて船のほうに。ところでチハヤ様、それは?」
「ん?」

饅頭を食べることに没頭していたらしいチハヤ様は俺の問い掛けに僅かに時間をあけて、ごくんと喉をならしてから「あぁ」と続けた。

「ケヴィンさんとパムさんがサービスで新製品をくれたんだ」
「そうですか…おすすめは?」
「ん、これとか」

差し出された饅頭を受け取る。まだほかほかとあたたかいそれはてのひらの上で湯気を立てていた。

「何味ですか」
「わかんないけど沢山のスパイスが効いていていいかんじだよ」

食べて、とチハヤ様は俺に向けて言うと、今度はヘルムートに向き直って饅頭を差し出した。

「はい、ヘルムート」
「…結構です」
「食べて」
「いぇ…」
「何にでも従うんじゃなかったの?」
「…頂きます」
「うん」

おそるおそる饅頭を受け取り口に運ぶヘルムートにチハヤ様はやっと満足したように立ち上がった。

「どちらに?」
「ん?みんなに幸せのおすそわけ」
「そうですか」
「シグルト」
「はい?」
「ちゃんと見てやってね。ヘルムートを」

今は本人渋々といえ僕らは仲間なんだから。

チハヤ様は唇だけで言葉を象って続ける。
訓練したものでしか読み取れないそれを見、俺はチハヤ様の真意に気付いて静かに頷いた。


(幻水4。続く、かもしれないネタ。シグと4主とヘルムートさん。)

2006.04.22 | | Comments(0) | Trackback(0) | 幻水

桜雨 (ツナと雲雀)


「わぁ…」

青空に一面の薄紅色の花びらが散りゆく。
その見事なコントラストにツナは思わず声を上げた。
隣に立つ、並盛中で最も恐ろしい男と畏れられる少年は半眼で桜とツナを交互に見て、目を伏せてから呟いた。

「…嫌いだ」
「え?」

彼は花見を好んでいた気がする、と言葉の意図が掴めずにツナは目を首を傾げる。
そして雲雀の顔をみて、ツナは納得したように微笑んだ。

「雲雀さん、群れるのが嫌なんですか?」
「うん」
「なら、桜は好きなんだと思ってました」
「…どうして」

だって、とツナは再び空を見上げる。
一陣の風が駆け抜けて、木々を揺らし花びらを振り撒いた。
雲雀は眉を顰め、しかし視線を放すことなく(何にだかは分からないが)耐える。

「誰かが言ってたんですけど『桜は咲いているときは群れている。けれど、散る時はひとりひとりばらばらなんだ』って」

雲雀は珍しく驚いた表情でツナを見た。

「桜、好きですか?」
「………(嫌いじゃない)」

またひとひら、はなびらがてのひらにふりおちた。


2006.04.20 | | Comments(0) | Trackback(0) | REBORN

いつもあの子は鮮やかに笑っていた (ロイ→リヒャルト)

「嘘」

自分が呟いた言葉をロイは他人事のように聞いた。

目の前には俯いたままのシエルが立っている。
視線を落とせば握り拳が震えていて、何かを堪えているんだと思った。

(信じられない。信じない。嘘だ。)

脳が必死に否定する。
さっきシエルが放った言葉を、耳に届いた言葉をなかったように排除しようとして、何度も失敗している。

「ごめん」

シエルは何に対して謝っているんだ?

謝るくらいならはじめから言わないでくれたら良かった。
適当に誤魔化してくれたらそれだけで、俺は。

頭はパンクしそうなくらい次々と考えが巡って消えていく。
なのにこころはこれ以上ないってくらいに冷えていて。冷静に分析して判断を下す。

「嫌、だ」

精一杯の拒絶を込めて両手を頭にそえてかぶりを振る。

(嘘だ、信じない。だってほら、今にもその角から彼が現れるような、いつものように想い人の話をはじめるような、そんな気がして、)



[幻水5。ロイ→リヒャルト。キルデリクにリヒャ敗北ルート。]

2006.04.17 | | Comments(0) | Trackback(0) | 幻水

愛 (ラハルとミアキス)

ふたりの間に愛はあるかと聞かれたら、きっと。

「一応『ある』とは答えるとおもいますねぇ」

相手の姿を思い浮かべているのか、大きな瞳をやや上目使いに、こちらを見ずにミアキスは言った。

「でも、それきっと王子が想像する愛とは少し違うと思いますよぉ」

うまく説明はできませんけどぉ、という彼女の口調は普段と変わりないようにみえて、何かを確信しているようだった。

「だってさ」

シエルが見聞きしたことをそのまま伝えるとラハルは満足気に頷いた。

「あぁ、ミアキスならそういうと思ったよ」と。自信に満ち溢れた顔で、フレイルの背を撫でながら。

その様子を見て、そんな愛も悪くないなとシエルは思った。


2006.04.16 | | Comments(0) | Trackback(0) | 幻水

かなしいおとがする (ラハルとラニア)

「どうしたんです?姉さん」
「?」
「表情が強張っていましたし、ずっと空を睨むように見つめていました」
「……そう?」


ラニアは首を傾げて張り詰めた緊張を解きつつ、ゆっくりと息を吐いた。
ラハルは不思議そうな顔で姉であるラニアを見つめる。

「大丈夫。少し考え事していただけ」
「そうですか……なら、良いのですが」
「ラハルは?」

用もないのにラハルがラニアのところに顔を見せにくるのは珍しい。

「あぁ、…いえ、少し気になった事があったんで。…でも姉さんが何も察知していないなら俺の気のせいでしょう…」
「そう」

会話は途切れ、二人は窓越しに空を見上げる。
夕暮れ時の空はいつもとは変わらない。
でも。それでも。

何か、胸騒ぎがした。
大切な幼馴染みが、彼女が泣いているような、助けを求めているような、そんな気が。


2006.04.14 | | Comments(0) | Trackback(0) | 幻水

これが恋なんて認めない (カイルとオロク)


「オロクさん、顔に『貴様一体何のつもりだ』って書いてあるよ?」
「事実、そう思っているが」
「なんのつもりか教えてあげようか?」

突然部屋に入ってきたカイルは椅子に座り本を読んでいたオロクの髪をひいて床に引き摺り倒して組み敷いた。それから早五分。
上に乗るカイルのせいで体の自由がきかないオロクは派手に打ち付けた肩が痛むのか眉をしかめた。
それを見て、カイルは動きを封じるための腕に更に力をかける。


「……さっさと退け」
「嫌ですよー」
「ふざけるなよ、この自己中男が」
「そんな男が気になって仕方ないのは、特別な感情抱いちゃってるのはアンタでしょーが」
「………」

オロクは言葉を返すかわりに、男性にしては細く色白の手を延ばし、長い指でカイルの頬に触れる。
カイルは驚いた表情で意外な行動にでたオロクを見た。

「お前なんか嫌いだ」

喉の奥でわらいながらオロクはカイルの頬にそのままがり、と容赦無く爪をたてた。

2006.04.14 | | Comments(0) | Trackback(0) | 幻水

悲 (マリノとシルヴァ)


「悲しむことなどやめることだな」

冷たい声にマリノは思わず信じられないものを見るような目でシルヴァを見た。
その瞳はいつも通り、冷静さが滲み出ていて感情の揺らぎは微塵も感じられない。
こんなときまで冷静でいられる、誰かが死んだときですら眉一つ動かさずにいるこの女性が初めて憎いと思って、マリノは目を伏せた。
視線の先にいるのは、自分が手当をして、助けられなかった患者だ。
閉じた瞳はもう二度と開くことはないだろう。
まだ年若い少年だった。
おそらくシュン君についてきた闘技奴隷だったのだろう。
死に逝くにはまだ早過ぎた、とマリノは思う。
そうしている間に、シルヴァが男手を連れてきた。聞けば、少年を移すのだそうだ。共同墓地の方へ、ベルクートさんは少年を抱えあげて目を閉じた。
何かに祈っているのだろうか、口が僅かに動く。

「早く運んでくれ。他にも多くの患者がいる。身動きがとれなくなるのはごめんだよ」

言い放つシルヴァに何も言わずにベルクートは頷いた。
そのまま場所をあける。
そしてそこに運ばれて来る負傷者。

***

「疲れただろう」

温かな紅茶の入ったマグカップをひとつ、シルヴァがこちらに差し出して、マリノはようやく自分に注いでくれたのだと気付き、受け取った。
あたたかなそれは安心を与える温度で、たくさんの死を見届けた今日の疲れ果てたこころに染み込んだ。
無心にただ治療の手伝いをしていた気持ちが息を吹き返して、どうしても昼間の疑問が首をもたげたマリノは覚悟して口にしてみた。

「シルヴァ先生は、どうしてあんなに割り切れるんですか」

助からないと、切り捨てられるんですか。あんなにあの子は助けてと訴えて居たのに。
なにもできなくてくやしくて、なのに先生はなんでもないみたいに言い切りましたよね。
そしてどうして

「どうして、悲しむな、と」

マリノの言葉は途切れ、しばらくの沈黙。
紅茶の飲み干してカップをテーブルにおいたシルヴァは、ふぅ、と息をついて言った。

「悲しんでいては、身が持たないだろう」

ここは戦場で、戦がある以上ひとは死ぬ。若者でさえ、年寄りでさえ、女子供も選ばずに、命をさらっていく。理不尽に、あまりにも簡単に、命は摘まれてしまう。

「さぁ、あんたはもう宿にお帰り」

待っているひとが多くいるはずだ。私は患者の様子をもう一度見回ってくる、と身を翻すシルヴァの白衣の裾をとらえながらマリノは思う。
一体このひとはいくつの死と対面してきたのだろう、と。

疑問を口に出すのは憚られた。
マリノは「ごちそうさまでした」とカップをおいて部屋を後にする。
自分のいるべきところへ帰るために。


(久しぶりに更新。幻水5。マリノさんとシルヴァ先生。非戦闘員も補佐にはまわっていそうという妄想から。)



2006.04.11 | | Comments(0) | Trackback(0) | 幻水

優しい温度 (サギリとフヨウ)


多分このひとは、幸せを生み続ける力を持っている。

「シグレちゃんは王子様達といっちゃったし、先生はお仕事。そうなると妙に静かで少しさびしいわねぇ」

こぽこぽと、お茶を注ぐ。

「あぁ、でも先生、今日の夕方には帰ってくるみたいよ?」

ころり、鈴のなるように身を翻す。

「そうそう、新作クッキー焼いてみたの。味見お願いできるかしら」

にっこりと笑う。
その手にはあたたかなバスケット。

「サギリちゃん、どうしたの?」

(寂しいの?)

「帰ってくるまで、少し遊びましょうか」

ちょこまかと動く小柄な体。
ころころと変わる表情。
どこにそんな力の源があるのだろう。

(尽きることない、力。あなたは私がなくしてしまった。欲しくてたまらないものを持っていて、それを惜しみ無く与えてくれる)


2006.04.08 | | Comments(0) | Trackback(0) | 幻水

白い花 (ミアキス)

ラハルちゃんの髪には、白い花がきっとよく似合う。

ミアキスは花冠を抱えながら幼馴染みの片割れの姿を思い浮かべた。

女性と見まごう程きれいな白い肌に青みの掛かった黒髪。
彼の服にちなんで青の花でもいいとも思ったが青い花はここら辺では見掛けないし、彼を引き立てることはできないと思った。だから、白だ。

これを渡したならまた子供染みていると呆れるだろうか。
それでも常に纏う独特の空気で彼は「仕方ないな」と花冠を受け取ってくれるのだろう。

その様子を安易に、そして克明に想像しながらミアキスは足取り軽く竜馬騎兵団の訓練場へ向かった。

2006.04.06 | | Comments(0) | Trackback(0) | 幻水

雲 (カイルと王子)


喩えるならば、貴方は、

「雲、かなぁ」

青空に流れて来る白を指差しながら。
シエルは疑問符をつけた声で呟いた。
シエルの隣りに座り同じように空を眺めていたカイルは「はぁ、」と何ともいえない曖昧な声で返した。

「なんですかいきなり」
「ん?いや、こっちの話」

王子が突拍子もない話題を始めるのはいつものこと、といえばいつものことで。
まぁいいか、とカイルはそれ以上詮索せずに、シエルに倣って、再び果てしない青空を見上げた。


(雲や風に憧れるのは、その自由さにだろうか。大きさにだろうか。いっそかなわないと、届かないと思い知っているからこそ、僕は、)



[幻水5。シエル王子とカイル。風と雲の続きの一部]

2006.04.01 | | Comments(0) | Trackback(0) | 幻水

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