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壊れて (ピオニーとディスト)

「今更、何をいうのかと思えば」

疲れきったような曖昧な嘲笑をディストは浮かべる。
誰に向けてでもない、ディスト自身に向けた壊れた感情に、ピオニーは内心舌打ちをした。

「あのころになどもどれない」
「サフィール」
「私たちが追いかけていたものは幻想で、何をしてももうネビリム先生は帰ってこない」
「サフィール!」

叫ぶように台詞を止めるピオニーに視線を向けたディストは嘲笑を浮かべたまま続ける。

「戻れない!いくら貴方が帝王とて所詮は人の子!時間を操る術など持たないだろう!持たない以上、貴方は一生私の願いを叶えられない!」

狂ったように、否。きっともう狂っている彼は何度も何度も同じことを繰り返し過去にすがる。
大人になることを拒むこどものように純粋で一途なその願い。

だけど、そんなのは叶えられない。
自分にも、他の誰にも。

「サフィール」

ピオニーが掴んだディストの腕は氷のように冷たくて、血など一滴も通っていないみたいに白かった。
あの思い出の埋められた冷たい白のごとく。

そして何もうつさない、現実を見つめようとしない紫の瞳が一瞬、憎悪をむき出しにする。
なにかを口にする前に強い力ではね除けられた。



(TOA。陛下と死神。こわれているのは世界かそれとも自分の方か)

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2006.05.18 | | Comments(0) | Trackback(0) | TOA

白に埋まる (ピオニーとジェイド)


懐かしい声がきこえた気がして、うっすらと目をあけた。


防寒服に身を包んだ幼馴染みが馬鹿にするような目でこちらを見下ろしていた。

「…ピオニー陛下。こんなところで眠ってはいくら貴方でも凍死しますよ。国を治める王が雪だるまと共に埋もれるなど嘆かわしい」

どうやら雪布団の上で眠っていたらしい。
びっしょり濡れたピオニーはさすがに眉をしかめた。
溶けた雪が染み込んだ服は確実にピオニーの体温を奪っている。
「風邪をひくのは覚悟しないと(きっと一般人ならこの時点で生命が危うい)」とピオニーを引き起こすジェイドの息は白く、このケテルブルクの空気にとけていく。

「…ジェイド」
「まだ寝ぼけているんですか?というか何故貴方がここに?」
「あぁ、ネフリーに会いに来た」
「…ネフリーなら留守ですよ」
「みたいだな」

ケテルブルク知事宅は薄暗く人の気配はない。
(留守を任せるはずだった女中も用事が出来てしまい家はニ日だけ空っぽになるとネフリーが言っていた。もっともそれを知るのはジェイドのみだが。)

「タイミング悪いですねぇ」
「…だな」
「で、陛下。どうやってここへ?」
「ん?それは秘密」
「…まぁいいでしょう」

聞いても今更ですし、貴方なら何をしていても驚きませんとジェイドは苦々しく溜め息をつく。その中に僅かだが愉しさが潜んでいるのを感じ取ってピオニーは笑った。

「あ~、折角ここまで来たんだし。スパにでも行くかねぇ」

体を暖めないと不味い。生死に関わると本能的に察知したのかピオニーは体を動かして、伸びをする。
頭に積もった雪が落ち、溶けたそれは水滴となって髪を伝い落ちた。



(TOA。大佐と陛下。前半部分がどっかにいってしまったもの。ケテルブルク好き。)

2006.05.18 | | Comments(0) | Trackback(0) | TOA

静かに眠れ (シンクとアリエッタ)

不意に肩にかかった重みにシンクは書類から目を離し、小さく息を吐いた。

背後から言葉はないが、わざわざ振り返るまでもなくそれが誰であるのかシンクにははっきりとわかっていた。
こんなことを自分に仕掛けてくる人物は神託の盾広しといえど指折りで。
尚且つ自室にまで入ってくる人物の心当たりはひとりしかいない。

「重い」

書類に目を通すことを再開しながら抗議の声をあげる。
内心無駄だとはわかっていたが。
何か言ったところで離れるはずがない。

「すこし、だけ」

結局そう言われれば許してしまう。
つくづく甘いな、とは思うけれど。

「シンクは、あったかいね」

まだ少し掠れた声の呼び掛けに呆れて。

「いいから静かに眠ってなよね。風邪、まだなおってないんだから」
「……うん」
「ほら、被って」

執務机の向こうに手を伸ばし上着を引き寄せて、振り返らずに自分に寄り掛かるアリエッタに手渡す。

「ありがとう」
「全く…」



(シンクとアリエッタ。なんだか中途半端(汗)。その温度にすがりついているのは、きっと)

2006.02.26 | | Comments(0) | Trackback(0) | TOA

救 (アニス←イオン)


ずっと、貴方に救われていた。

あなたが監視として僕の導師守護役になったことは薄々気付いていました。
時折あなたの明るい笑顔がかなしそうに曇ることも、僕に負い目を感じていることも、それでもあなたが僕をこころから守ろうとしてくれたこともすべて、僕は知っていたのです。

知っていてそばにおいた。
優しくて幼くて、しっかりしたあなたを。

その表情がころころ変わるのが僕はとても好きでした。

「さよなら、僕の大切な……」

続きは言わない。
霞んだ視界に、君のなきそうな姿が滲んで見えた。




(レプリカだって生きた。ひととおなじに。たとえ、短すぎる時間でも。)

2006.02.20 | | Comments(0) | Trackback(0) | TOA

変化 (アニス)

息が詰まる感覚を、このところよく覚えている。

ルーク達と行動するようになって変わったのは何だろう。
アニスはふと考えて、くだらないと苦笑した。

皆それぞれだろう。
ルークなんて初めて会った時とはもう別人みたいになった。
ティアやガイに言わせると良い傾向、らしい。
ガイは女性恐怖症がだいぶ良くなった、と思うしナタリアだってもう生意気なだけのお姫様じゃない(本人に聞かれたら怒られるじゃすまなさそうだが)。
大佐は心なしか優しくなった気がするしティアは表情豊かになった。
イオン様はより一層天然に成長した、と思う。

そこまで考えて、アニスは自分はどうだろう、と思いを巡らせ、立ち止まって俯いた。

足下には湿気を含んだ濃い土色が広がっている。

アニスがここにいるのは自らの意思ではじゃない。使命からだ。
あの、莫大な借金を肩代わりしてくれた大詠師モースの道具として、情報を流すため自分はここに居る。
いっそ皆が初めのころのルークみたいな性格だったら良かった。
そうしたら遠慮無く蔑むことができる。
否定して、嘲って、鈍底まで突き落とすことが出来るのに。
イオン様も、もっと傲慢な人なら良かった。
あんなに人がいいなんて、卑怯にもほどがある。


周りを騙すのは簡単で、それゆえに心苦しさはアニスを叙々に浸食していった。
そうして生まれた揺らぎに今は自分が呑まれそうになっている。
なんて滑稽な。


「アニス、どうしました?」

突然立ち止まったアニスを気遣うようにイオンの優しい声が響いた。
前を歩いていたルーク達が振り返る。

「あ、イオン様。あの、私少し疲れてしまって、出来たらでいいんですけど少しだけ、休んじゃ駄目ですか?」


視線は地面に向けたまま、絞り出すように言う。

自分が休憩を提案することは珍しいことで、近寄って来たナタリアに顔色が悪いと咎められた。
ジェイドが一度だけ溜め息をついて「ここで倒れられては迷惑ですからね」と近場にあった(日除けとしては申し分ない)大木を指差し「そこで休憩しましょう」と歩き出した。
皆それに倣い移動する。


各々が休憩を取り、体を休める。
殆ど間を空けずにルークの「腹減った」という呟きが漏れ、それ合図にティアが料理を始めた。
その匂いは空腹のアニスには堪らなく恋しかったけれど、対照的に胃は激しく拒否していた。

「……気持ち、悪い」

アニスは呟いて、気を紛らわせようと辺りを見渡す。
見ると、草むらに座ったイオンがルークやガイと何か話をしている。
ここからでは内容までは聞き取れない。
向かいの岩場に寄り掛かるジェイドの突き刺すような視線を躱しながらアニスは大木に背を預ける。
一度、ゆっくりと深呼吸して目を閉じた。



(今だけは、何も考えずにいたいと願う)



2006.02.19 | | Comments(0) | Trackback(0) | TOA

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